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歯内療法日記: 2025年5月アーカイブ

インプラント前に出来る治療

患者さんは30代女性

2023年にセラミッククラウンを入れ、最近近所の歯科医院へ検診に行った際に

「右上の歯を抜いてインプラントにする必要がある」と説明を受けた。

現在痛みがある時、無い時がある、歯の奥の方が痛い感じ、1月ぐらいに歯茎にフィステルができ今もある。

  

レントゲン

2025 EEdental OMS (1).jpg

近心頬側根(MB)と口蓋根(P)に根尖病変が見られます。

CTを撮ったのですが、口蓋根の根尖病変は上顎洞に接しているのは分かるのですが、病変の大きさがはっきりしません。ただ病変はあります。 

セラミックアンレーが入っていますが、適合は良い為3mmの穴を開け根管治療をすることに 

 

治療1回目

2025 EEdental OMS (2).jpg

 人工物を全て除去、MB2が出てくる。

過去の治療で口蓋根の根尖はかなり削られていました。

根の先はあまり闇雲に削らない方がいいと思うんですが・・・

根尖を削れば治る、貼薬剤を入れれば治るという間違った理解 - EE DENTAL_Blog

 

治療2回目 

腫れ痛みはなく、フィステルも無くなった。とのこと

2025 EEdental OMS (3).jpg

口蓋根と近心頬側根にはMTAを使用

 

口蓋根はガッタパーチャーとMTAが出てしまっていますが、

出さないように治療しても、入口1つ出口も大きな状態なのでどうしても人工物が外に出てしまいます。

 

今回のセラミックアンレー適合が良かったのと、中の治療もきちんとやってあるように見えたので

セラミックは外さず3mmの穴から治療を行い、その部分はレジンで蓋を作りました。

2025 EEdental OMS (4).jpg 

 

この後経過観察を行っていきます。

何とか病変治ってくれるといいのですが(・ω・;

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歯を長く残したい患者さんへ「土台除去はリスク:大」

何度か書いていますが、個人的には

歯の治療で歯の寿命を縮めてしまう最大の因子は【歯科医師の治療】

 

「えっ、治す為に治療しているんじゃないの!?」 

と思われますが、違います。

歯の治療=歯の寿命を短くする になります。

 

虫歯の進行と言うのは個人差がありますが、歳を取れば取るほどゆっくりになります。

しかし、歯科医師の治療というのは虫歯が数年かけて進む距離を2~3秒程度で削ってしまいます。

 

特に歯を大きく削るのは根管治療後に入れた土台を除去する際

患者さんの中には、歯科医師が入れたものなんだからレゴブロックのように簡単に外れるようなイメージを持たれている方もいますが、外れないように入れた物ですから、外すのは全て削って壊しながら除去します。

 

全て顕微鏡下でチマチマ治療している先生なら、どこからが人工物でどこからが天然歯の見分けは付きやすいですが、それでも微妙に健康な歯は削ってしまいます。

*たまにいるのですが、顕微鏡治療を受ければ健康な歯は削らない的なことをいう方いますが、「それは無理だって! アロンアルファーでくっ付けたもの綺麗に外せますか!?」(笑) 

 

今回のケース

50代女性

歯周病健診で行った歯科医院で「根に膿がたまっている、今すぐ治療した方がよい」と言われ説明もないまま治療が始まり、クラウンとコアを外したら「抜くしかない」と宣告されショックを受けた。

全く症状も無かった歯だけに。。。

 

抜歯宣告をされて2か月後にEEデンタルへ

レントゲン

2025 EEdental FJY (1).jpg

土台は外しているようなのですが、近遠心根に根尖病変+根分岐部にパフォレーションの疑い 

  

ん~、経験上大きな痛みや腫れがない限りそんなに急いで治療する必要などはないと思うのですが・・・

根尖病変(膿)は慢性疾患であり、糖尿病や高血圧と同じように日に日に微妙に悪くなる病気です。

 

患者さんに残す方向で治療してみるか!?と話

治療スタート 

治療1回目

2025 EEdental FJY (2).jpg

パフォレーションが2か所あり、その部分の補修

裸眼で奥歯の土台を外すとこのリスクはかなり大きくなります。

*保険診療では仕方がないと思います、窓口負担200円程度でやる処置なのであまり時間はさけれません。(ホント治療費設定誤り過ぎだって!)

1本100万円の価値があるという歯を200円で治すって、ちょっと意味不明(100万円の軽自動車を200円で何直せますか!?と同じ) 

   

治療2回目

2025 EEdental FJY (3).jpg

腫れや痛みなどの症状もないことより根管充填+レジンコア+仮歯まで 

 

ここから経過観察をして行きます。

 

術後1年

2025 EEdental FJY (4).jpg

根尖病変は小さくなってきてくれていますが、根分木部の骨はあまり回復していません。

患者さんも仮歯で普通に生活出来ているとのことで、仮歯でもうしばらく様子をみることに

 

術後2年 

2025 EEdental FJY (5).jpg 

根尖の透過像は小さくなったように見えますが、根分岐部の骨はあまり出来ていません。。。

 

経験上、根分岐部付近のパフォレーションは治すのが難しいです。

ただ、これって患者さんの不摂生で作ってしまった病気ではなく、治療で削り過ぎたことによる医原性の問題です。

 

今回のケース、問題無く2年使えており先日仮歯が割れてきてしまったので、そろそろ本歯に入れ替えをしようと思います。 

日本の医療システムは優秀だと思いますが、歯科に関して言えば安過ぎの為に起ってしまう問題でもあります。

物事には適正価格があると思うんですけどね。。。(>。<)

 

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根尖病変は切開では治りません。

根管治療を専門でやっていると初診の患者さんでたまにいるのが、

腫れて近医に行った際に切開を行って治療をしたのに治らないというケース

 

基本的に根尖病変由来で腫れた場合は、切開をしても治りません

腫れて膿んだ原因は歯の中の細菌感染であり、歯の中の細菌除去を行わないと何度も腫れを繰り返します。

つまり、「切開」は膿がかなり溜った際に膿を外に出し減圧を行い痛みを多少和らげるぐらいの応急処置の1つです。

 

では、なぜ原因除去である根管治療をせずに切開で済ませるのか!?

 

こういったケースの多くは、長いポストが入ったコアが入っており、根管治療がしにくい場合が多いです。

 

今回の患者さん

40代男性 7~8年前から痛みがあり近医で切開治療を行った際に膿んで骨が溶けていると言われた。

 

レントゲン

2025EEdental URT (1).jpg

 大きな根尖病変が見られ、案の定長いメタルポストが入っています。

ただ、歯根端切除などは行っておらず根尖は破壊されていません。

*たまに患者さんは切開と表現されても「歯根端切除術」という外科処置がされている場合があり、この場合の予後は悪いです。

 

患者さんに一通り説明して、まずは根管治療でトライしましょうとなりました。 

  

長いメタルポストですが、このぐらいの長さであれば歯内療法専門医であれば問題無く除去可能です。

2025EEdental URT (2).jpg

治療は2回法で行いました。

この歯神経管は2本でしたが1本しか治療しておらず、手づかずの神経管はドロドロに汚れていました。

歯の中からも細菌が作る独特の臭いが部屋に充満します。(綺麗にすれば臭いは殆ど取れますが、患者さんは自分の歯の臭いでビックリする人もいます。)  

 

術後痛みも腫れもなく経過しており

2025EEdental URT (3).jpg

レントゲンでもだいぶ病変は小さくなってくれています。

かかりつけでクラウンを入れてもらう予定で治療終了となりました。

  

今回のケースは手づかずの神経管に細菌感染が起こり、結果膿んできたと推測されます。

つまり切開をしても原因の除去を行っていないので、何度も腫れたり痛んだりを繰り返します。

  

今回のケース、先日電話があり

「先生に作ってもらった仮歯が割れた&隣の銀歯も取れた」

と連絡があり5年ぶりに来院してもらうと

 

2025EEdental URT (4).jpg

根尖病変は綺麗に治ってくれていました。

仮歯が6年も持ったのは初ではないでしょうか(笑)

 

患者さんに「本歯は先生やって!」と言われたので6年越しにセラミッククラウンを入れることになりました。

 

仮歯は入れてから1~2年後には本歯にしてくださいね( ・ω・ ;) 

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根尖を削れば治る、貼薬剤を入れれば治るという間違った理解

最近は減りつつありますが、たまにあるケースです。

これやっている先生、やられている患者さんがおられましたら歯内療法専門医に早目に相談された方がいいと思います。

    

私が大学生だった頃、教えられたのは根管治療は削れ、削れとよくライター(指導医)に言われ、

抜去歯での練習でもライターチェックを受けると

「後、3号上まで拡大してきて」(後、歯の中を1.5mm太くして)

学生なので、『はい』というだけで指示に従っていました。

前歯なんか、今の自分では【おいおいもう削るの止めておけ!】ぐらい太くしていました。

 

仕方がないんですが、トレンドなんですよね。

今の根管治療は次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液で細菌数を減らす方向になっています。

削る作業は必要最小限に留めるのが今のトレンドで、昔のように大きく・太く削るのは過去の考え方です。

 

今回のケース

患者さんは50代女性

急に左上1に痛みが出てしまい、歯科医院に行くと神経の治療が必要とのことで根管治療スタート

術前時特に大きな虫歯などは無かった。

最初の歯科医院で7ヵ月ぐらい根管治療を続けるも治らず、転院

また転院先で根管治療を続けるも痛みが取れない、都合30回ぐらい根管治療を続けている状態で

大学病院に行くも「消毒しかない」と言われ、EEデンタルへ 

 

現在は治療中の左上1より右上1・2の方が気になる。治療中の左上1はたまにズキズキする程度

過去に1度だけ腫れたことがある。

   

レントゲン

2025 EEdental TKa (1).jpg

右上のピンクの神経管に対して4倍近く太く削られており、あまり触らない方がよい根の先もだいぶ削られ、根尖破壊が見られます。

ただし、根尖病変は見られません。(30回も根管治療していればこうなってしまいます)  

 

経験則で、これは「削り過ぎ」だなと判断しました。

また抜髄スタートから8ヵ月も根尖を突かれていると思われるので、患者さんには

「経験則で話すと、たぶん痛みはすぐには取れないと思います。 痛みが取れるパターンは2~3ヵ月ぐらいして、痛みの頻度・大きさが減り、半年後ぐらいに『あれ!?最近いたみないな!?』みたいな感じで治るパターンがありますが、多少の違和感程度のものは残ることもあります」

と説明(こういうパターンは毎回同じ話します。)

  

治療1回目

仮蓋を除去してみると、ペリオドンの臭い。。。

「えっ、そっちのパターン!?」

レントゲンから削り過ぎで痛みが出ていたパターンだと思っていたら、どうやら複合因子でペリオドンを貼薬して痛みを長期化させているよう・・・

歯の神経治療は要注意!特に女性!! - EE DENTAL_Blog

またこれだけ太く削っている割には、入口付近の髄角の歯髄は取り残していました。。。

 

歯の先の方の根尖は、唇側方向にトランスポーテーションを起こしており、本来のオリジナルの根尖が口蓋側にありました。(鏡餅のような形)

つまり太く削っていても問題無い部分をゴリゴリ削って傷口を広げているだけ。

見えている人間からすれば、やっちゃダメ!と分かるのですが、見えていない先生は更に削って治そうとします。(ステンレスファイルの特性で太いファイルほど根管を直線化させます)

削る必要ないぐらい太く削られているので、この日は消毒液で徹底的に洗って無貼薬で終了。

  

1回目の治療で分かったのは医原性の問題がたくさん作られている・・・(>。<)

(先生も治そうと頑張ってくれたのだとは思いますが) 

   

1か月後の治療2回目 インタビューのみ  

治療後から腫れて来た感じがあり、歯に物が当たると痛い。

痛み止めを飲むほどは痛くなかった。

レントゲン

2025 EEdental TKa (2).jpg

特に所見に変化なし

  

更に1か月後の治療3回目

腫れ感、痛みはあるとのこと 

歯の中をもう一度洗浄(根管内は削らない)

 

更に1か月後の治療4回目

腫れ感は無くなり、痛みもほぼないぐらいに落ち着いている

ということでMTA+で根管充填+レジンコア+レジン充填

2025 EEdental TKa (3).jpg

 

根管充填後3ヵ月

歯に物が当たると痛い、普通の時は痛くない

患者さんには痛みが減っている傾向にあるので、待てば痛みも治まる可能性が高いことを説明

 

ここから諸事情で来院が途絶え経過が追えていませんでしたが、 

久しぶりに来院されたのでレントゲンを撮らせてもらいました。

治療後2年4ヵ月

2025 EEdental TKa (5).jpg 

特に問題はありません。

症状も根管充填後6ヵ月後ぐらいから全く無くなり、今も痛みは出ていないそう。

*たまたま、最初に説明させてもらったパターン通りでした。 

 

OK,OK、おおよそのパターンに乗っており治ってくれたようです。

 

これって、不適切な根管治療により患者さんに植え付けられる医原性の痛みです。

結果から言えば、今回のケース触り過ぎ&ペリオドンの不適切な使い方が原因になっています。 

 

GPの先生も大学時代に教えられたことがメインだと思います。

ただ、その治療というのは30年以上前のやり方であることが多く、今の治し方ではありません。

全ての歯科医師が全分野のトレンドを追う必要はないと思いますが、3ヵ月やっても改善しないようなケースは闇雲治療しても症状を悪化させるだけなので、3ヵ月やって収まらないケースはなるべく専門の医療機関を紹介してください。

 

また患者さんも、ある程度の所でその歯科医院に見切りを付けた方がいいケースもあると知ってもらった方がいいと思います。

転院は患者さんの権利ですし、歯科医師に気を使って痛みに耐え、歯を失う必要はありません。 

 

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分割抜歯を行い使えるだけ使う歯の治療

毎回ブログで書いていますが、条件の悪い歯になってくると歯を残すかどうかの診断は先生毎に異なります。

特に根管治療で問題の出た歯は、根管治療得意・不得意で差は出てしまいます。

理由は根管治療は歯科治療の中でも細かい作業の連続で難しいから。

 

まぁ、国家試験に受かれば一律で同じ知識と技術みたいなイメージを患者さんは持たれますが、

車の運転免許と同じ、一般人が試験対策の勉強をしてライセンスだけ交付してもらうようなものです。

 

運転免許と少し違うのは実技は免許を取った後に行うもので、そこから技術を付けて行きます。

 

私の時代は臨床実習がまだあった時代なので、大学病院で患者さんを診させてもらうことが出来ましたが、それでも1年で5人ぐらいの診察でした。

 

大学を卒業すると、大学院に行ったり、医局に入ったり進路は色々です。

私なんかは、遊びたかったのですぐに開業医に行きそこで技術の習得をしました。

  

ただ、この進路は個々に好きに決めていいのですが、先日聞いた話では

アメリカの大学は大学卒業すると優秀な人は専門医の道に進むようで、今一番人気があるのは歯内療法科(エンド)

理由は給料がいいから(笑)

 

今、歯内療法専門医になると新卒で年収は4500万だそうです。

これだけの給料が確定していればそれは頑張りますわね。

 

日本なんて歯科医師の平均年収は1000万を切る時代です。

*開業医の労働時間って雑務含めると週50時間は越えると思います、日曜とかの学会や勉強会時間を含めると更に労働時間は長くなります。

 

患者さんがそんなことは知ったこっちゃないのですが、まぁ現場の人間としては目の前の患者さんの治療をするだけです。 

 

患者さんは50代女性

歯茎を押さえると痛い、普通にしている時は問題無いが食べ物が当たると痛い。

先生には根の方に問題があると言われた。

 

レントゲン

2025 EEdental HIY (1).jpg

かなり根管が太く削ってあり、近心根に問題がありそうです。

 

治療をしてみると

2025 EEdental HIY (2).jpg

近心根の側面に大きなパフォレーションがありそこをMTAで埋めました。

今の時代こんなに根管太く削らない方がいいと思うんですけどね。。。

  

仮歯を入れ経過をみて行きます。

半年後のレントゲン検診

2025 EEdental HIY (3).jpg 

普通にしている時に痛みは無いが食べた時は一過性に痛い。

 

根管治療から1年4ヵ月

近心根にクラックを見つけ、咬んだ時に痛みは破折だと分かる。

*最近見つけた法則として、仮歯が頻繁に外れる歯も折れていることが多い

 

患者さんと話し合い分割抜歯(ヘミセクション)することに

2025 EEdental HIY (4).jpg 

分割抜歯は裸眼で盲目的に行うより顕微鏡下でカットしてカット面をなるべく滑沢にした方がいいと感じます。

 

ヘミセクション後仮歯を作り直して経過観察

2025 EEdental HIY (5).jpg

術後1年抜いた部分はしっかり骨が出来ており、これで治療を終了しました。

 

先日、久しぶりに電話がかかってきて、痛い感じが最近またし始めたとのことで来院してもらうと、

2025 EEdental HIY (6).jpg

特に変な所見もなく1年前のレントゲンを同じでしたので、このまま使ってもらうこととなりました。

 

歯科治療は1本1本問題が異なります、また患者さん毎に痛みの感じ方もことなります。

 

日本ではまじめにやるとホント儲かりませんが、非常に面白みのある仕事ではあります(笑) 

65歳ぐらいまではやろうと思っていますが、年々衰えを感じるので何歳まで情熱が維持できるか!?

 

患者さんにこんな話したら「ちょっと患者が困るからもっと働いてよ」と言われました。。。 

 

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